値上げでお客様が離れる原因は、値上げそのものより伝え方と見た目です。押さえる点は3つです。
- 総額表示は義務――2021年4月から、消費者向けの価格表示は税込での総額表示が義務です。値上げのタイミングは表記を間違えやすい場面です
- 修正液・手書き訂正をしない――「値上げした」という事実だけが強調されます
- 全品を一律に上げない――看板商品を据え置くと、印象が大きく変わります
原材料や光熱費の高騰が続くなか、価格を据え置いたままお店を続けるのは難しくなっています。値上げそのものは、お店を守るための正当な経営判断です。問題は「伝え方」と「切り替えの段取り」のほう。告知が唐突だったり、メニュー表に古い価格が残っていたりすると、値上げ自体よりもそちらでお客様の印象を損ねてしまいます。
この記事では、値上げを決めてからメニュー表を差し替えるまでの段取りを時系列で整理し、そのまま使えるお知らせ文例と、やってしまいがちな失敗を紹介します。
値上げからメニュー表差し替えまでの段取り
値上げは「決めた日」ではなく「メニュー表が切り替わった日」に完了します。次の順番で進めると抜け漏れがありません。
- 改定日を決める。月初や仕入れの切り替わりなど、区切りのよい日にすると自分もスタッフも管理しやすくなります。繁忙期のど真ん中は避け、告知期間を2週間〜1か月確保できる日を選びましょう。
- 新価格の一覧表を作る。メニュー表・券売機・レジ・デリバリーサイトなど、価格が載っている場所をすべて書き出し、品目ごとの新旧価格を1枚にまとめます。この一覧が、差し替え当日のチェックリストになります。なお、店内に掲示する価格は消費税を含んだ総額表示が原則ですので、新価格も税込でそろえておきましょう。
- お客様への告知を始める。店内掲示・SNS・常連のお客様への声かけなど、複数の経路で改定日と理由を伝えます。文例は次の章で紹介します。
- 改定日当日にメニュー表を一斉に差し替える。開店前に、手順2の一覧表と突き合わせながら全ページ・全冊を確認します。レジや券売機の設定変更も同じタイミングで行います。
新しいメニュー表の印刷データは、改定日の1週間前までに用意しておくと安心です。当日に「印刷が間に合わない」となると、後述する手書き訂正に頼らざるを得なくなります。
お客様へのお知らせ文例(店内掲示・SNS)
お知らせで大切なのは、理由を正直に伝えることと、これまでの感謝を添えることです。値引きの言い訳のような長文にする必要はありません。そのまま使える文例を2つ紹介します。
価格改定のお知らせ
いつもご利用いただきありがとうございます。原材料価格および光熱費の高騰が続いており、誠に心苦しいのですが、〇月〇日(〇)より一部メニューの価格を改定させていただきます。
今後も味とサービスの質を保ちながら、皆様に安心してお越しいただけるお店を続けてまいります。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
店主
【価格改定のお知らせ】いつもありがとうございます。仕入れ価格の高騰にともない、〇月〇日より一部メニューの価格を改定いたします。品質を落とさずお店を続けていくための決断です。新しい価格は改定日以降、店内のメニュー表にてご確認ください。今後ともよろしくお願いいたします。
掲示は改定日の2週間〜1か月前を目安に始め、改定後もしばらく残しておくと、久しぶりに来店したお客様にも伝わります。
総額表示の義務を確認する
2021年4月から、消費者向けの価格表示は税込の総額表示が義務になっています。値上げのタイミングは、この表記を間違えやすい場面です。
| 表示 | 可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 1,100円 | ○ | もっとも簡潔。迷ったらこれ |
| 1,100円(税込) | ○ | 総額が明示されていれば問題なし |
| 1,100円(税抜1,000円) | ○ | 総額が先に読めるなら併記も可 |
| 1,000円(税抜) | × | 総額が示されていない |
| 1,000円+税 | × | 同上 |
値上げ時にやりがちなのが、新しい品だけ税込、古い品は税抜のままという混在です。差し替えは一部だけでも、表記の統一は全品で確認してください。1枚の中で基準が揃っていないと、お客様が金額を比べられません。
値上げ幅の伝え方
同じ値上げでも、伝え方で受け取られ方は変わります。効くのは理由を言うことより、据え置いたものを示すことです。
- 全品一律で上げない――看板商品やランチを据え置くと、「全部上がった」という印象になりません。原価率の低い品で調整します。
- 理由は一行で足りる――「原材料価格の高騰により」で十分です。長い説明は、かえって言い訳に見えます。
- いつからかを明記する――「○月○日より」がないと、会計で初めて気づかれます。掲示は2週間前からが目安です。
- 謝りすぎない――「誠に申し訳ございませんが」を重ねるより、「これからもおいしく作ります」のほうが伝わります。
値上げのお知らせは、メニュー表と同時に差し替えるのが鉄則です。お知らせだけ先に貼って、メニュー表が古いままだと、どちらが正しいのか分かりません。差し替えを一度で済ませられる状態にしておくことが、いちばんの備えになります。
メニュー表差し替えでよくある失敗
告知まではきちんとできていても、メニュー表の切り替えでつまずくお店は少なくありません。よくあるのは次の3つです。
- 旧価格の消し忘れ。壁のポスター、卓上POP、ドリンクの裏面など、メニューブック以外の場所に古い価格が残るケースです。会計時に「メニューと値段が違う」と指摘されると、値上げそのものより印象が悪くなります。
- 手書き修正で見栄えが悪くなる。修正液や上から貼ったシールだらけのメニュー表は、お店全体が雑に見えてしまいます。
- 一部ページだけ古いまま。「ランチページは直したけれど、ドリンクページは旧価格のまま」という中途半端な状態は、複数冊のメニューブックがあるお店で特に起きがちです。
新旧の価格が店内に混在した状態は、お客様との会計トラブルの元になります。差し替えは「できたページから順に」ではなく、新価格一覧のチェックリストを使って改定日の開店前に一斉に行いましょう。
修正液や手書き訂正はなぜ避けるべきか
「1品だけの値上げだから、その場で書き直せばいい」と考えたくなりますが、手書き訂正にはデメリットがあります。
まず、二重線や修正跡は「値上げされた」という事実を毎回目に入れてしまうことです。刷り直したメニュー表なら新しい価格が「いまの当たり前の価格」として自然に受け取られますが、訂正跡があると、注文のたびに元の安い価格と比べられてしまいます。
また、修正だらけのメニュー表は清潔感の印象にも響きます。飲食店にとってメニュー表は、お客様が滞在中もっとも長く見つめる印刷物です。ここが雑然としていると、料理や店内が整っていても「管理が行き届いていないお店」という印象につながりかねません。応急処置として一時的に使うのは仕方ないとしても、できるだけ早く刷り直したものに差し替えるのが得策です。
価格変更をすぐ反映できる仕組みを持っておく
手書き訂正に頼ってしまう一番の理由は、「刷り直しに時間とお金がかかるから」です。デザインを外注していると、初回制作に2〜5万円、価格を1つ変えるたびに数千円〜1万円程度の修正費と数日の待ち時間がかかるのが一般的で、こまめな改定には向いていません。
MenuPrint(メニュープリント)は、スマホのブラウザでメニュー名と価格を入力するだけでプロ品質のメニュー表が仕上がるサービスです。アプリのインストールは不要で、発行されたQRコードをローソン・ファミリーマートのマルチコピー機にかざせば、A4カラー片面60円〜(両面120円〜)の印刷代だけでその日のうちに刷り直せます。コンビニ印刷の基本的な使い方はメニュー表をコンビニで印刷する方法で詳しく解説しています。
「価格を変えたら数分で新しいメニュー表になる」仕組みを持っておくと、値上げのたびに悩む差し替え作業が、告知に集中できるシンプルな段取りに変わります。